「半導体ショック」でほくそ笑む中国
世界中の半導体生産が寒波や火事などでつまずき、半導体不足が深刻化しているが、これは中国の半導体業界にとっては過去の半導体投資失敗を挽回するチャンスになるかもしれないー―という。 【写真】日本人は知らない…いま中国で本当に起きている「ヤバすぎる現実」 多維新聞や維科網などいくつかの独立系華字メディアが最近そういう論評記事を相次いで出した。 2月に米テキサス州を襲った寒波のせいによる停電で、現地の韓国サムスン電子の半導体工場や自動車用半導体大手のドイツ・インフィニオンテクノロジーズの工場が停止。続いて3月、世界の車載半導体3強のひとつに数えられる日本のルネサス・セミコンダクタ・マニュファクチュアリングの那珂工場が火災にあい、さらに4月1日、台湾のファウンドリー企業、TSMCの工場でも火災が発生、と半導体業界にトラブルが相次ぎ、世界の半導体不足に拍車をかけた。 特に車載半導体がひっ迫し、世界各国の自動車工場が生産停止に追い込まれている事態はすでに多くのメディアが報じている。 自動車は「走る半導体」と言われるほど、大量の半導体が組み込まれている。新型コロナの流行による世界的なリモートワークの潮流でパソコンの需要や、引きこもり族のゲーム機需要が増えたこと、米中貿易戦争の先鋭化で、半導体のサプライチェーンの中国デカップリングの動きが市場供給を不安定化させたことなどの背景もあって、もともと半導体不足だったのが年明けのトラブルによってさらに深刻化した格好だ。
「半導体危機」は中国にチャンスだ、と
3月3日にゼネラルモーターズがすでに生産停止になっていた3つの工場の生産停止期間の延長を発表し、さらにもう1つの工場の生産停止を決めた。フォルクスワーゲン、フォード、ルノー、ダイムラーなどの企業もまた程度の差こそあれ、一様に打撃を受けている。 世界の自動車生産はおよそ150万台減産となった。米国の経営コンサルタント企業のアリックスパートナーズの予測では世界的な半導体不足により、2021年第一四半期の自動車企業の売り上げの損失はおよそ140億ドルになり、2021年全体では610億ドルの損失との試算も出ている。またこの半導体不足の状況は今後2年前後続く、という見通しもある。 一方で、こうした世界的半導体窮地は、中国にとってはチャンスになるかもしれない、という期待にあふれた見方が中国国内報道で出ている。 つまり、半導体不足危機は、世界の半導体サプライチェーンの再構築のきかっけになるものであり、中国企業としていかにどのようにして自らのポジションどりをするかによっては、過去数年間の半導体投資戦略の失敗や問題点を挽回できるかもしれない、というわけだ。 会員制のハイテク産業総合情報ネット・維科網(4月8日)は「世界の半導体不足により、台湾セミコンダクター(TSMC)ら最大半導体ファウンドリー企業もやる気まんまん。最近5日間、連続3回にわたって半導体製造代行価格を引き上げ、うち12インチウェハーの製造価格は25%も値上げした。これは中国の半導体製造業にとっては得難い発展チャンスだろう」と報じた。
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