JR東日本は、利用者の少ないローカル線の区間別の収支を年内に公表する。客観的なデータを基に地方自治体と協議を始め、鉄路に限らない地方交通の形を探る構え。廃線を警戒する沿線自治体は多く、調整は難航が予想される。
深沢祐二社長が5月の定例記者会見で「比較しやすい一つの(公表)基準」と言及したのが、1日1キロ当たりの利用者を示す平均通過人員(輸送密度)2000人を下回る区間だ。既に収支を開示したJR西日本は、路線維持が困難とされるこの基準を採用した。
JR東は2月、地方交通網に関する国土交通省の有識者検討会で、2000人未満の路線数を示した。収支が明らかになる線区とは異なる部分もあるが、共通する傾向が読み取れる。
資料によると、2000人未満の路線は国鉄が民営化した1987年度の13から、2019年度は24にほぼ倍増。新型コロナウイルス禍の20年度は26に増えた。東北に関係する路線は表の通り。19、20年度いずれも19(廃止された岩泉線を含む)が該当した。
新型コロナの影響が少ない19年度との比較で、民営化時に1357人だった気仙沼線(前谷地-気仙沼)は2割弱の232人に落ち込んだ。東日本大震災で被災し、バス高速輸送システム(BRT)を導入した。
2411人から850人に減った陸羽東線(小牛田-新庄)など、東北の15路線(岩泉線を含む)が1000人にも満たず経営は厳しいとみられる。
JR東は公表後、各自治体との協議を通じ(1)路線を維持する(2)BRTを含むバス輸送に転換する(3)運行と施設保有を分ける「上下分離方式」を採用する-などの方向性を探る見通しだ。
鉄道各社が収支を公表する背景には、新型コロナ流行で受けた大きな打撃がある。JR東では収益の柱だった首都圏の在来線や新幹線の利用者が減り、東北・上信越の線区の赤字を穴埋めする「内部補助構造」が成り立ちにくくなった。
国交省の検討会が沿線の人口減やコロナ感染の状況を踏まえ、地方交通網の再構築策を7月までにまとめる動きに合わせて議論を活性化する狙いもある。
深沢社長は「地方交通について各自治体と話してきたが、具体的に協議する場がつくりにくかった。国の取り組みと並行し、私どものデータを出すことが議論を深める上で必要と考えた」と述べた。
各県知事、廃線に危機感
ローカル線の区間別収支を開示するJR東日本の方針を巡り、東北各県の知事は廃線への不安や交通網の在り方を地域と共に協議する必要性に言及した。
「路線の廃止につながるのでないかと、危機感を持たざるを得ない」。山形県の吉村美栄子知事は5月18日の定例記者会見で懸念をにじませた。「県民にとって鉄道は重要な足」と述べ、改めて市町村などと活用法を考えていく意向を示した。
宮城県の村井嘉浩知事は同月23日の定例記者会見で、路線の存廃をはじめとする将来の方向性に関し「民間企業であり、経営判断があっていい」とJR東に理解を示しつつ、「しっかりと地域やわれわれとも話をして進めてほしい」と求めた。
東北6県を含む28道府県の知事は同月11日、黒字路線の収益を赤字路線に振り向けるルールの創設を通じ、鉄道ローカル線の維持を求める緊急提言を国土交通省に提出した。
提言では「ローカル線の廃止は住民の通勤、通学、通院などへの影響が強く危惧される」と強調。代替交通では運行継続に補助金が必要だったり、慢性的な人手不足に陥ったりする課題があると指摘し「結果として地域の公共交通を失いかねない」と訴えた。
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